令和8年(2026年)最新版!企業が取り組むべきメンタルヘルス対策と法改正のポイント
近年、社会情勢や労働環境の急激な変化に伴い、仕事や職業生活に強い不安やストレスを感じる労働者が増えています。実際に、令和6年度の精神障害による労災請求件数は3,780件、支給決定件数は1,055件と過去に比べて増加傾向にあり、企業にとってメンタルヘルス対策は「安全配慮義務」の観点からも重要かつ急務な課題です。本記事では、東京都発行の「働く人のメンタルヘルスガイド2026」の情報をベースに、小規模事業場へのストレスチェック義務化や、最新のハラスメント対策、そして職場復帰支援のステップなど、事業者が知っておくべき実務ポイントをプロの社労士が解説します。
1、メンタルヘルス不調と企業の「安全配慮義務」
心の病気の主な原因は「過度のストレス」です。
ストレスと心の関係はよく「風船」に例えられ、外部からの圧力(ストレッサー)が強すぎると、心という風船は元に戻らなくなってしまいます。
労働契約法第5条では、企業に対して従業員が安全に働けるよう配慮する「安全配慮義務」が定められており、メンタルヘルス対策もこれに含まれると広く解釈されています。
従業員の「残業や休日出勤が続きひどく疲れを感じている」「仕事のことを考えてしまいよく眠れない」「ミスが多く仕事が進まない」「コミュニケーションがうまくとれなくなった」といった不調のサインを見逃さず、
早めに相談や対処を行うことが極めて重要です。
2、50人未満の事業場も対象に!ストレスチェック義務化への対応
メンタルヘルス不調を未然に防止し、従業員自身のストレスへの気づきを促す「ストレスチェック制度」は、これまで労働者数50人以上の事業場で実施が義務付けられていました。
しかし、令和7年5月14日に公布された法改正により、
現在当分の間努力義務とされている50人未満の事業場においても、ストレスチェックや高ストレス者への面接指導の実施が義務付けられることになります(施行は公布の日から3年以内の政令で定める日)。
企業は、本人の同意なしに結果を事業者に提供してはならない等の厳格なプライバシー保護のルールを守りつつ、集団ごとの集計・分析結果を職場環境の改善に活かすことが求められます。
なお、小規模事業場への導入に向けて、厚生労働省からはマニュアルの作成や地域産業保健センター(地さんぽ)の体制拡充などの支援が予定されています。
3、職場環境を改善する「4つのケア」とは
職場でメンタルヘルス対策を効果的に推進するためには、継続的かつ計画的な「4つのケア」の実践が不可欠です。
具体的には以下の4つを指します。
セルフケア:
労働者自身がストレスに気づき、対処する
ラインによるケア:
管理監督者が職場環境の把握・改善や相談対応を行う
事業場内産業保健スタッフ等によるケア:
産業医や衛生管理者等が中心となって企画立案等を行う
事業場外資源によるケア:
外部の専門機関等のサービスを活用する 企業はこれらのケアが適切に実施されるよう、まずは「心の健康づくり計画」を策定し、教育研修等を通じて組織全体の体制を整える必要があります。
4、担当者必見!休職から職場復帰(復職)支援の5ステップ
万が一、従業員がメンタルヘルス不調で休職してしまった場合、医学的に業務復帰が可能と判断された後の支援体制が不可欠です。
事業場において取り組むべき職場復帰支援の手順は、以下の5つのステップで行います。
①病気休業開始及び休業中のケア
②主治医による職場復帰可能の判断
③職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成
④最終的な職場復帰の決定
⑤職場復帰後のフォローアップ
主治医の診断書を鵜呑みにするだけでなく、産業医による精査や主治医からの意見収集、職場環境の評価等も踏まえながら、段階的な復帰プランを立てることが重要です。
さらに、復帰後の疾患の再燃・再発の有無の確認を丁寧に行うことが、本当の意味での再発防止の鍵となります。
5、法改正が進む各種ハラスメント(カスハラ・フリーランス)対策
業務上の強い心理的負荷となるハラスメントへの対策も、メンタルヘルス不調を防ぐ上で極めて重要です。
企業にはパワハラ防止等の雇用管理上必要な措置がすでに義務付けられていますが、
労働施策総合推進法の改正により、顧客等からの著しい迷惑行為である「カスタマーハラスメント(カスハラ)」を防止するための措置も新たに事業主の義務となります(令和7年6月11日の公布から1年6か月以内の政令で定める日に施行)。
東京都ではいち早く「カスタマー・ハラスメント防止条例」が制定され、令和7年4月から施行されています。
さらに、令和6年11月施行のフリーランス法により、発注事業者に対するフリーランスへのハラスメント体制整備も義務化されました。
社内ルールの見直しと相談窓口の周知を徹底し、ハラスメントのない安全な職場を目指しましょう。

