トピックス 法改正
「紙の保険証、いつまで使えるんだっけ?」令和7年12月までの変更点と、マイナ保険証・資格確認書のハナシ【社労士コラム】
ふと財布に入っている健康保険証を見たとき、「これ、いつまで使えるんだろう」と気になったことはありませんか?
ニュースでもよく耳にするようになりましたが、現在お手元にある健康保険証は、記載されている有効期限が来るとそこで役割を終えます。もし期限が書かれていない場合でも、令和7年(2025年)12月1日が最長の期限と決められています。
「えっ、じゃあその日を過ぎたら病院に行けなくなるの?」
そんな不安を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、どうかご安心ください。制度が変わっても、誰もが医療を受けられる仕組みはちゃんと用意されています。今後は、大きく分けて次の2つのどちらかで受診することになります。
マイナ保険証(保険証として登録したマイナンバーカード)
資格確認書(カードをお持ちでない方などに交付される書類)
私たち社労士の立場から見ても、マイナ保険証への移行は単なる「デジタル化」以上の意味があると感じています。受付が早くなるだけじゃないんです。私たちがより安全な医療を受けるためのメリットが、実はいくつも隠されている。
今回は、ちょっと複雑に感じるこの制度の仕組みと、どうしてもカードを作りたくない・持てないという方のための「資格確認書」について、専門用語をなるべく使わずにお話しします。
1. そもそも「マイナ保険証」って? 今までの保険証はどうなる?
「マイナ保険証」という新しいカードが配られるわけではありません。すでにお持ちの(あるいはこれから作る)マイナンバーカードを、健康保険証として使えるように登録したもの。これを便宜上、そう呼んでいるだけなんです。
今の保険証は、先ほどお伝えした通り、最長で令和7年12月1日まで。それ以降は発行されなくなります。
ここで一番大切なことをお伝えしますね。 「マイナンバーカードがないと、医療が受けられない」というのは誤解です。
カードを持っていない、あるいは持っていても保険証としての登録はしたくない。そういう方には、自動的に**「資格確認書」**というものが交付されます。申請などの手続きは今のところ不要で、無償で届く予定です。
これを病院の窓口に出せば、今まで通りの負担割合で診察を受けられます。「紙の保険証」が「資格確認書」という名前に変わり、形が少し変わるだけ、と考えていただければ気が楽になるのではないでしょうか。
2. 実はけっこう助かる。マイナ保険証の3つのメリット
「それなら、わざわざマイナ保険証にしなくてもいいんじゃない?」 そう思われるのも無理はありません。ただ、私たち社労士が制度の中身を詳しく見ていくと、やはりメリットは大きいなと感じるのです。大きく3つ、ご紹介しましょう。
過去のデータが、あなたを守る
お薬手帳、うっかり忘れてしまうことってありませんか? マイナ保険証を使い、ご本人が「同意」をすれば、医師や薬剤師が過去の処方薬や特定健診の結果を見られるようになります。
これがなぜ重要かというと、飲み合わせの悪い薬を避けられたり、体の状態を正確に把握してもらえたりするから。「初めて行く病院だけど、私のアレルギーや持病のこと、ちゃんと伝わるかな」という不安が、データ連携によって解消されるのです。より良い医療を受けるための、見えない味方になってくれるんですね。
「高額療養費」の手続きが不要に
これが一番のメリットかもしれません。 もし急な入院や手術で、医療費が高額になったら。「限度額適用認定証」という書類を事前に役所や健保組合に申請しないと、窓口で高額な支払いを求められてしまいます。体調が悪いときに、この手続きは本当に大変です。
でも、マイナ保険証があればこの紙の書類は要りません。 自動的に自己負担の上限額が適用されるので、窓口での支払いが抑えられます。「いざという時」の事務手続きがひとつ減る。これは精神的にも大きな安心材料です。
救急の現場で「命綱」になる
想像したくはないですが、もし旅先で倒れて救急車で運ばれたら。 意識がもうろうとして、自分の病気や飲んでいる薬を救急隊員に伝えられないかもしれません。そんな時、マイナンバーカードがあれば、救急隊員が迅速に情報を確認し、適切な搬送先や応急処置を選定できるようになります。
まさに、カード一枚が「ものを言わぬ自分」の代わりに、命を守る情報を伝えてくれるわけです。
3. カードを作るには? 有効期限の「落とし穴」に注意
まだマイナンバーカードをお持ちでない方は、スマホ、郵送、あるいは街中の証明写真機からでも申請できます。最近は商業施設などで出張申請サポートを見かけることも増えましたね。お買い物のついでに相談してみるのも良い手です。
ただ、すでに持っている方も含めて、ひとつだけ注意してほしいことがあります。
マイナンバーカードには、実は「2つの有効期限」があるんです。
カードそのものの期限(顔写真がある面の期限)
電子証明書の期限(ICチップの中身の期限)
特に忘れがちなのが2つ目の「電子証明書」。これが切れると、カード自体はキレイでも、保険証としては使えなくなってしまいます。
「有効期限通知書」が届いたら、面倒がらずに更新に行きましょう。更新を忘れても3ヶ月間は資格確認だけできる特例はありますが、せっかくのメリット(過去の診療情報の共有など)は使えなくなります。マイナポータルアプリなどで、ご自身の期限を一度チェックしてみてください。
4. 病院での使い方は案外シンプル
「機械の操作が苦手で…」という声もよく聞きますが、やってみると意外と簡単です。
受付にあるカードリーダーに、カードを置く。
「顔認証」または「4桁の暗証番号」で本人確認。
過去の情報を医者に見せるかどうかの「同意」を選ぶ。
受付完了。
これだけです。 特に顔認証なら、マスクをしていても認識してくれる精度の高さに驚かされます。もし操作に戸惑っても、病院のスタッフさんが優しく教えてくれるはずですから、あまり構えずにトライしてみてください。
5. もしものトラブル。カードが使えない時は?
機械ですから、たまに読み取れないなんてトラブルもあるでしょう。 「今日は全額(10割)負担です」なんて言われたら焦ってしまいますが、そんな場合でも落ち着いて。
スマホをお持ちなら「マイナポータル」の画面を見せる。あるいは、先ほど触れた「資格確認書」を持っていればそれを出す。かかりつけ医なら「前回と保険証は変わってません」と伝えれば対応してくれることも多いです。
どうしても確認が取れない初診の場合でも、**「被保険者資格申立書」**という書類をその場で書いて出せば、保険診療を受けられます。ちゃんと救済措置はあるので、怖がらなくて大丈夫。
最後に、選択肢は残されています
ここまでマイナ保険証のお話をしてきましたが、ご高齢の方や障害をお持ちの方など、どうしてもご自身でのカード管理が難しいケースもあると思います。
その場合は、マイナ保険証を持っていても、申請をすれば「資格確認書」を交付してもらえます。「カードと紙、両方持っておく」という選択もできるのです(代理申請も可能です)。
制度は変わりますが、医療を受けられなくなるわけではありません。 ご自身のライフスタイルや不安に合わせて、一番安心できる方法を選んでみてくださいね。手続きで分からないことがあれば、私たち社労士や、お近くの年金事務所などに相談するのもひとつの手です。

