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2025.12.05
【社労士解説】会社が大きくなる時、社長が知っておくべき「法律の壁」の話。人数別の義務と対応ガイド

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【社労士解説】会社が大きくなる時、社長が知っておくべき「法律の壁」の話。人数別の義務と対応ガイド

会社を経営していると、ふとした瞬間に「空気が変わったな」と感じることはありませんか? 創業当時は全員の顔色が見えていたのに、いつの間にか知らない社員同士が挨拶を交わしている。それは会社が順調に成長している証拠であると同時に、社長一人で全てを見渡すのが難しくなってきたサインでもあります。

「最近、法律のことが気になり出した」 「人を雇うルール、これで合ってるのかな?」

そんな不安を感じ始めた経営者の皆様へ。 実は労働に関する法律の多くは、この**「人数の壁」**を基準にラインが引かれています。

人が増えるというのは、単に作業量が増えるだけじゃありません。会社としての「骨格」を太くしなさいよ、と法律が求めてくるタイミングでもあるんですね。 今回は、会社の成長に合わせてやってくる「法律の壁」と、それをどう乗り越えていくかについて、少し整理してお話しします。

10人の壁。「阿吽の呼吸」から「ルールブック」へ

まず最初にやってくる大きな変化。それが「常時10人」のラインです。 ここで求められるのが、「就業規則」の作成と届出。

10人未満のときは、「まあ、その辺は常識でよろしく」とか「社長の背中を見て学べ」で通じていたかもしれません。でも、10人を超えるとそうはいかなくなる。育ってきた環境も価値観も違う人たちが集まれば、当然「当たり前」の基準もズレてきます。

就業規則は、そんなズレを修正するための「会社の憲法」のようなもの。 「うちはこういうルールでやっていきます」と明文化して、労働基準監督署へ届け出る。これが、組織としての第一歩になります。

あともう一点、意外と見落としがちなのが「労働時間」のこと。 実は、飲食店や美容院など一部の業種で許されていた「週44時間労働」の特例。これも10人以上になると原則どおりの「週40時間」に戻ります。 「知らなかった」では済まされない部分なので、10人を超えそうだなと思ったら、ルールの本を作りつつ、働き方の時間も見直す。そんな準備が必要です。

50人の壁。社長の目が届かない場所をケアする仕組み

従業員が50人を超えると、オフィスや現場の活気はすごいものでしょう。 でも、活気がある反面、誰かが無理をしていたり、体調を崩していたりすることに気づきにくくなるのもこの時期です。

法律もそこを心配していて、50人を超えると**「安全衛生管理」**の義務が一気に増えます。 具体的にはこんな感じです。

衛生管理者を選んでね(業種によっては安全管理者も)

産業医の先生にお願いしてね

衛生委員会を毎月開いてね

ストレスチェックを年1回やってね

要するに、「社長一人で社員の健康を守るのはもう無理でしょ? 専門家や仕組みの力を借りなさい」ということなんです。 特にストレスチェックは、近いうちに50人未満の会社にも義務化される流れがあります。 「管理コストがかかるなあ」と思うかもしれませんが、社員が健康で長く働いてくれることは、結局一番のコストダウンになる。50人の壁は、会社が「健康経営」に舵を切るチャンスかもしれません。

40人、51人...。少し複雑な「多様性」の基準

ここからは少し数字が細かくなりますが、大事な話です。

まず、障害者雇用。 今は法定雇用率が上がっていて、40人以上(正確には40人~)の規模になると、障害のある方を一人以上雇用する義務が出てきます。さらに2026年にはこの基準が「37.5人」まで下がる予定。社会全体で働く場所を作っていこう、という流れですね。

そして、社会保険の壁。 パートさんやアルバイトさんの社会保険加入、いわゆる「適用拡大」の基準が、2024年10月から**「51人以上」**の企業になりました。 「51人」の数え方がまた少しややこしくて、全従業員数ではなく「現在、厚生年金に入っている人の数」でカウントします。

週20時間以上働いている

学生じゃない

月8.8万円以上稼いでいる

こうしたパートさんがいれば、社会保険に入ってもらう必要があります。「扶養内で働きたい」というスタッフさんとの調整も必要になるでしょう。このあたりは制度がよく変わるので、私たち専門家でも常にアンテナを張っている部分です。

101人、301人の壁。社会に対する「宣言」

従業員が100人、300人を超えてくると、もう立派な地元の有力企業です。 ここでは「女性活躍推進法」や「次世代育成支援対策推進法」といった法律が登場します。

漢字が多くて難しそうですが、要は「行動計画」を作って公表してね、ということ。 「女性管理職を増やします」とか「男性の育休取得を進めます」といった目標を立てて、世の中に宣言するわけです。301人を超えると、さらに詳しいデータの公表も求められます。

これは単なる義務というより、「うちは社員を大切にする、いい会社ですよ」とアピールする絶好の機会でもあります。採用ブランディングの一環として捉えると、前向きに取り組めるかもしれません。

法律を守るのは、会社を守るため

「法律、法律ってうるさいなあ」 正直、そう思うこともあるでしょう。本業で忙しい時に、管理部門のことまで手が回らない。その気持ち、よく分かります。

でも、こうした法律の基準は、過去にどこかの会社で起きたトラブルや過労の問題から、「同じことを繰り返さないように」と作られてきた歴史でもあります。 対応を後回しにして、「ブラック企業」なんて噂が立ってしまったら、それこそ積み上げてきた信頼が一瞬で崩れてしまう。

だからこそ、私たち社労士がいます。 社長は、会社の未来や事業のことを考えてください。 「今、うちは何人くらいだから、そろそろあの準備が必要だな」 そんな法的な足場固めは、私たちが引き受けます。

会社が大きくなるのは、素晴らしいことです。 その成長痛を少しでも和らげて、安心して次のステージへ進めるようお手伝いしますので、人数の壁が見えてきたら、ぜひ一度声をかけてください。

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