従業員への研修費用が増加傾向
従業員の能力開発に大きな注目が集まっていますが、今回は産労総合研究所が行った「2023年度(第47回) 教育研修費用の実態調査」から、今後の教育研修に関する企業の意向についての結果を抜粋して取り上げて見ていきましょう。なお、この調査は2023年6~7月に、上場企業および同社会員企業から任意抽出した約3,000社を対象に行われ、今回の結果はそのうち147社から回答を得たものとなっています。
(1)従業員一人あたりの研修費用の推移
教育研修費用の総額を回答企業の正規従業員数で割った「従業員1人あたり研修費用」の2022年度実績額の平均は32,412円で、大きな減額となったコロナ禍の2020年以降、回復傾向が見られる。
(2)教育研修費用総額の今後(1~3年)の方向性
今後(1~3年)の教育研修費総額の見込みについては「かなり増加する見込み」が9.7%、「やや増加する見込み」が53.1%で、合わせて62.8%に上り、過去10年ほどで最も高い増加傾向となった。
(3)2023年度(今年度)重点的に取り組む教育研修(上位3つを複数回答)
最も多かったのが「新入社員教育」、次いで「中堅社員教育」、「選抜型幹部候補者育成教育」、「初級管理者教育」などとなった。職種別・目的別教育のなかでは、「DX・デジタル教育」や「メンタルヘルス・ハラスメント教育」が多くなっている。
コロナ禍に落ち込んだ企業の教育研修費用が回復しています。人的資本経営が重要視され、将来を睨んでリスキリングの強化などに取り組む企業が増えていますが、このような中での人材開発施策の推進にあたっては、企業がこれまで以上にその目的を見失わないことが重要になってきます。オンライン化による研修の効率化も含めて、企業の教育研修の見直しが今後一層進んでいくことになるでしょう。