月額変更の考え方
2023年度の地域別最低賃金(全国加重平均額)は、昭和53年度に目安制度が始まって以降で最高の引上げ額となり、多くの企業で人件費の負担が増加することになります。
10月1日以降、都道府県ごとに決められた発効日に改定後の最低賃金が発効されますが、そのタイミングは1ヶ月ごとに区切った賃金計算期間の途中となるケースもあるでしょう。最低賃金額を下回るような賃金の場合、発効日以降の労働に対して最低賃金額以上の賃金を支払う必要があるため、賃金計算期間の途中に発効日がある場合、以下のいずれかによって最低賃金の引上げに対応する必要があります。
1.賃金計算期間の初日に前倒し賃金額を引上げる
2.賃金計算期間の途中の発効日に合わせて賃金額を引上げる
最低賃金の引上げについてはいずれも問題ありませんが、引上げのタイミングは随時改定(月額変更)にも影響を与えることになります。例えば、賃金計算期間が前月16日から当月15日、賃金支給日当月25日の場合で、最低賃金の発効日が10月1日の場合、以下のような対応になります。
1.賃金計算期間の初日に前倒し賃金額を引上げる(9/16引上げ)
10月起算:10/25、11/25、12/25に支給される賃金により月額変更を判断する
2.賃金計算期間の途中の発効日に合わせて賃金額を引上げる(10/1引上げ)
11月起算:11/25、12/25、1/25に支給される賃金により月額変更を判断する
これは「昇給・降給した給与が実績として1か月分確保された月を固定的賃金変動が報酬に反映された月として扱い、それ以後3か月間に受けた報酬を計算の基礎として随時改定の判断を行う。」という日本年金機構の「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」に示されたQ&Aに基づくものです。
給与計算ソフトにおいて月額変更を判断するような場合、2.の判定が想像通りにはいかないという可能性もあります。大幅な引上げにより、月額変更の対象になる従業員も多く発生する可能性が高いため、誤った取扱いをしないように注意しましょう。