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2025.10.01
知らないと罰則も!残業時間の上限規制と36協定の変更点をわかりやすく解説

法改正

知らないと罰則も!残業時間の上限規制と36協定の変更点をわかりやすく解説

「働き方改革」の一環として、残業時間の上限が法律で厳しく定められたことをご存知でしょうか。

かつて、時間外労働の上限は行政指導にとどまっていましたが、法改正により罰則付きの明確なルールへと変わりました。これは、長時間労働が引き起こす健康問題や、仕事と家庭の両立困難といった社会課題を解決するための重要な取り組みです。

この記事では、中小企業の経営者・人事労務担当者が必ず押さえておくべき「時間外労働の上限規制」について、具体的な上限時間から36協定の変更点、実務上の注意点まで、専門家の視点で詳しく解説します。
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【この記事でわかること】

法律で定められた残業時間の「原則」と「特別な上限」

自社が「中小企業」に該当するかの判断基準

新しい36協定届で必ず記載すべき必須事項
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1. 時間外労働の上限は「原則」と「例外」の2段階

法定労働時間(原則1日8時間・週40時間)を超えて従業員に労働をさせる場合、あらかじめ労働者の代表と労使協定(36協定)を締結し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。

今回の法改正で、この36協定で定めることができる時間外労働に、以下の通り法律上の上限が設けられました。

A. 法律上の上限(原則)
臨時的な事情がない限り、時間外労働(休日労働は含みません)の上限は以下の通りです。

月45時間以内

年360時間以内

まずは、この「月45時間・年360時間」という原則を徹底することが基本となります。

B. 臨時的な特別な事情がある場合の上限(特別条項)
通常予見できない大幅な業務量の増加など、臨時的な事情がある場合に限り、「特別条項付き36協定」を結ぶことで原則の上限を超えられます。
ただし、その場合でも、以下の上限をすべて遵守する必要があります。

時間外労働(休日労働は含まず):年720時間以内

時間外労働と休日労働の合計:月100時間未満

時間外労働と休日労働の合計:「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」のすべてが月80時間以内

原則(月45時間)を超えることができる回数:年6か月まで

【最重要ポイント:罰則の対象となる上限】
これらの上限に違反した場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
特に注意すべきは、特別条項の有無にかかわらず、1年を通して常に「時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満、かつ2〜6か月平均で80時間以内」というルールを守らなければならない点です。これは知らないでは済まされない、絶対的な上限となります。

2. 中小企業への適用範囲の確認

この上限規制は、大企業(2019年4月〜)と中小企業(2020年4月〜)で適用開始時期が異なりました。
自社が「中小企業」に該当するかは、企業単位で、以下の「資本金の額」または「常時使用する労働者数」のいずれかを満たすかで判断します。

業種   資本金の額または出資の総額 常時使用する労働者数
小売業   5,000万円以下     50人以下
サービス業 5,000万円以下     100人以下
卸売業   1億円以下         100人以下
その他   3億円以下          300人以下

※ 個人事業主や医療法人など、資本金の概念がない場合は「常時使用する労働者数」のみで判断します。
※「常時使用する労働者」とは、雇用形態(正社員、パート、アルバイト等)にかかわらず、常態として使用している労働者のことです。派遣労働者は、派遣元の企業でカウントされます。

3. 新しい36協定で必ず記載すべき事項

法改正に伴い、36協定(特に特別条項付きの様式)で協定し、届け出るべき内容が追加・変更されました。

【特別条項を設ける場合の主な記載事項】

時間外労働と休日労働の合計時間数

1か月については100時間未満、2~6か月平均については80時間以内に収まる範囲で設定する必要があります。

※届出様式には、この上限を満たすことを誓約するチェックボックスがあり、チェックがなければ受理されません。

年間の時間外労働時間

年720時間以内の範囲で設定する必要があります。

月45時間を超えられる回数

年6回以内としなければなりません。

限度時間を超える労働者への健康・福祉確保措置

医師による面接指導、勤務間インターバル制度、深夜業の回数制限など、具体的な措置を協定することが求められます。

なお、「業務の都合上」「業務上やむを得ない場合」といった曖昧な理由で特別条項を適用することは、恒常的な長時間労働を招くため、臨時的な事情として認められませんのでご注意ください。
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まとめ:法令遵守と働きやすい職場づくりのために
時間外労働の上限規制は、単なるルールではなく、従業員の健康と企業の持続的な成長を守るための重要な基盤です。法令を遵守できているか、36協定の内容は最新の法律に対応しているか、今一度ご確認ください。

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