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2025.10.15
働くすべての人が知っておくべき、令和の働き方の新常識。労働法の基礎知識をプロが解説

法改正

働くすべての人が知っておくべき、令和の働き方の新常識。労働法の基礎知識をプロが解説

様々な働き方が広がる現代、「この労働条件は適切だろうか」「トラブルが起きたら誰に相談すれば?」といった不安や疑問を感じたことはありませんか。働く人が安心して能力を発揮できる環境は、企業の成長にも不可欠です。この記事では、公的な情報に基づき、社会保険労務士が労働法の基本を分かりやすく解説します。労働契約から賃金、多様な働き方まで、あなたを守るルールと企業の義務を学び、安心して働くための知識を身につけましょう。

1. 労働法が私たちを守る理由

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労働法とは? その必要性と「労働者」の定義

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「労働法」という単一の法律はなく、労働基準法や男女雇用機会均等法など、働く人に関する法律の総称です。

なぜ労働法が必要なのでしょうか。労働契約の内容は、原則として労働者と会社の合意で決定されますが、労働者は雇ってもらわなければ生計を立てられず、会社よりも弱い立場にあることが多いのが現実です。もし契約が完全に自由だと、労働者にとって低賃金や長時間労働といった劣悪な条件となりかねません。

このような事態を防ぎ、労働者を保護するために、最低限のルールを設けているのが労働法です。

重要な点として、労働法の保護を受ける「労働者」には、雇用形態にかかわらず、正社員だけでなく、派遣社員、契約社員、パートタイム労働者、アルバイトのすべてが含まれます。労働法の知識を身につけることは、自分自身の権利を守るための第一歩です。

2. 働き始めの第一歩:労働契約と労働条件の確認

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トラブルを防ぐ!労働条件の明示義務とチェックポイント

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仕事を始めるにあたり、希望する働き方をイメージし、契約内容をしっかり確認することが大切です。

会社は労働者と契約を結ぶ際、賃金や労働時間といった労働条件を明示する義務があります。特に重要な次の6項目については、口約束ではなく原則として書面を交付しなければなりません(労働者本人が希望する場合に限り、FAXや電子メール等も可能)。

また、求人広告の内容と労働契約の内容に違いがある場合や、追加された内容がある場合には、会社はその違いや追加された内容を明示しなければならないことになっています。

労働条件通知書や雇用契約書を受け取ったら、「試用期間」の有無や「固定残業代」の詳細など、記載されている内容を隅々まで確認しましょう。

もし実際に働き始めてから、示された労働契約の内容と実際の労働条件が違っていた場合、労働者は約束通りにするように会社に要求できます。また、その違いを理由にすぐに契約を解除することも認められています。

3. 働く環境の基本ルール:賃金・労働時間・休憩

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知っておきたい「最低賃金」と「労働時間の上限」

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生活の基盤となる賃金には、最低賃金法で定められた最低額(最低賃金)があります。この「最低賃金」は、正社員、派遣社員、契約社員、パートタイム労働者、アルバイトなど、全ての労働者に適用されます。仮に労働者が同意したとしても、最低賃金より低い賃金での契約は法律によって無効となります。

また、過度な長時間労働を防ぐため、労働時間にも上限が設けられています。労働基準法では、労働時間を1日8時間以内、1週間で40時間以内と定めています(法定労働時間)。

法定労働時間を超えて労働者を働かせた場合、会社は必ず割増賃金を支払わなければなりません。この割増賃金は、雇用形態に関わらず全ての労働者に適用されます。

さらに、会社は労働者に対し、1日の労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合には少なくとも60分の休憩を、勤務時間の途中に与えなければなりません。

4. 職場の安全とハラスメント対策

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心身の健康を守る!安全衛生義務とハラスメントの禁止

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職場は、労働者の安全と健康が守られた快適な環境でなければなりません。労働安全衛生法により、会社は労働災害の防止措置を講じる義務があります。

これには、労働者を雇い入れる際とその後、年1回の医師による健康診断を行うことが義務づけられています。また、仕事上のストレスによるメンタルヘルス不調を防ぐため、会社は労働者に対し、1年以内ごとに1回、ストレスチェックを行わなければなりません(労働者数50人未満の事業場は努力義務)。

職場のハラスメント対策も企業の重要な義務です。パワーハラスメント(パワハラ)、セクシュアルハラスメント(セクハラ)、そして妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメントは禁止されています。事業主は、これらのハラスメント対策として、雇用管理上必要な措置を講じる義務が課せられています。

ハラスメント被害に遭った際は、会社の相談窓口担当者に相談し、対応を求めることが大切ですが、社内での解決が難しい場合は、全国の都道府県労働局にある「総合労働相談コーナー」などに相談することも可能です。

5. 多様な働き方の保護:非正規社員とフリーランス

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正社員以外も保護される?「不合理な待遇差の禁止」

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正社員だけでなく、パートタイム、契約社員、派遣社員など、多様な働き方が広がっています。これらの多様な働き方をする人々も、労働法上の「労働者」として保護を受けます。

パートタイム・有期雇用労働法や労働者派遣法により、いわゆる「正社員」とパートタイム労働者・契約社員・派遣労働者との間で、不合理な待遇差を設けることは禁止されています。仕事の内容や責任の重さが違う場合、それに伴って賃金や手当が違うことはあり得ますが、「非正規だから支給しない」という対応は不合理な待遇差に当たる可能性があります。

一方で、近年増加しているフリーランスは、企業と「業務委託契約」を結ぶ個人事業主であるため、原則として労働法の保護対象とはなりません。ただし、働き方の実態から発注者に雇用される「労働者」であると判断される場合もあり、その場合は労働法の保護を受けます。自分が「労働者」にあたるか不明な場合は、都道府県労働局や労働基準監督署に相談できます。

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