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2025.10.14
優秀な人材の定着を支援!【両立支援等助成金】柔軟な働き方選択制度コースの活用ポイント(中小企業向け)

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優秀な人材の定着を支援!【両立支援等助成金】柔軟な働き方選択制度コースの活用ポイント(中小企業向け)

企業の持続的な成長に不可欠なのは、優秀な人材の確保と定着です。特に、育児や介護と仕事の両立を支援する環境整備は、現代の企業経営において極めて重要な経営課題の一つとなっています。
厚生労働省が提供する「両立支援等助成金(柔軟な働き方選択制度コース)」は、育児を行う労働者が働きやすい柔軟な制度を導入する中小企業を強力にバックアップするための制度です。
本コースを活用することで、企業は労働者が安心して働き続けられる環境を整備し、人材流出を防ぐことができます。本記事では、この助成金の概要と、中小企業が支給を受けるために押さえておくべき主要なポイントを、社会保険労務士が実務的な視点で詳しく解説します。

1. 両立支援等助成金(柔軟な働き方選択制度コース)の概要と対象

優秀な人材の確保・定着を支援する制度

本助成金は、仕事と育児・介護等の両立支援に取り組む事業主を応援する目的で設けられています。特に、育児を行う労働者の柔軟な働き方を可能とする制度を複数導入し、利用者を支援した場合などに助成金が支給されます。
本コースの大きな特徴は、中小企業のみが対象となる点です。中小企業の範囲については、業種ごとに資本金の額または出資の総額、および常時雇用する労働者の数によって細かく規定されています(例えば、小売業は5,000万円以下または常時雇用50人以下など)。

■ 支給額

柔軟な働き方選択制度を導入し、対象労働者が利用した場合、支給額は導入した制度の数に応じて変動します。

制度を3つ導入し、対象労働者が利用した場合:20万円

制度を4つ以上導入し、対象労働者が利用した場合:25万円

これらの支給は、1事業主あたり最大5名までの対象労働者に対して行われます。
また、要件を満たした場合、制度利用期間延長加算(20万円)や、育児休業等に関する情報公表加算(2万円)が、1事業主につき1回限り加算されます。

2. 支給対象となる「柔軟な働き方選択制度」の具体的な種類

導入すべきは3つ以上!多様な働き方を可能にする制度

柔軟な働き方選択制度とは、育児を行う労働者が利用できる制度であり、以下の5種類の制度を指します。この助成金を受けるには、労働者の職種や配置等を考慮し、5つの制度のうち3つ以上を導入する必要があります。
柔軟な働き方選択制度は、原則として、子が3歳以降小学校就学前までの労働者が利用できる制度として設ける必要があります。

■ 柔軟な働き方選択制度(5種類)とその概要

フレックスタイム制度(①-i)と時差出勤制度(①-ii)

①-i フレックスタイム制度: 労働者の申出によりフレックスタイムを利用できる制度。清算期間の総労働時間を短縮せずに利用できることが条件です。

①-ii 時差出勤制度: 1日の所定労働時間を変更せずに、始業または終業時刻を1時間以上繰り上げまたは繰り下げる制度。

注: フレックスタイム制度(①-i)と時差出勤制度(①-ii)の両方を導入した場合でも、助成金上の制度数としては1つの制度として扱われます。

育児のためのテレワーク等

自宅等での勤務を可能とすることで、育児との両立を容易にする措置。週または月当たりの勤務日の半数以上利用できることなどが求められます。

柔軟な働き方を実現するための短時間勤務制度

1日の所定労働時間を平均1時間以上短縮する措置(例:原則6時間とする措置、5時間または7時間とする措置など)。

保育サービスの手配及び費用補助

労働者の子に対する保育サービスの手配と、利用に係る費用の全部または一部を補助する措置。所定労働時間を変更せずに利用できる制度である必要があります。

養育両立支援休暇制度

年次有給休暇や子の看護等休暇とは別に取得できる、有給の休暇制度。1年度あたり10労働日以上付与され、時間単位(中抜け可能)で取得できることが必要です。

3. 支給要件の鍵となる「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」

導入前の準備と面談が重要

柔軟な働き方選択制度による助成金支給を受けるためには、単に制度を導入するだけでなく、「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」の作成と実施が必要不可欠です。
このプランは、育児を行う労働者が制度の利用や利用終了後のキャリア形成を円滑に行うことができるよう、事業主が労働者ごとに作成する計画です。
支給申請を行うまでには、以下のステップを、制度利用開始日の前日までに実施しておく必要があります。

プランに基づく支援方針の周知: 柔軟な働き方に関する制度の利用及び制度利用後のキャリア形成を円滑にすることを支援する方針を、全労働者へ周知する。

対象労働者との面談とプランの作成: 対象制度利用者と面談を実施し、その結果を踏まえて「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」を作成する。面談は上司または人事労務担当者が行い、対面が困難な場合は電話やメールによる相談・調整でも差し支えありません。

プランには、制度利用期間中の業務体制の検討に関する取組、および制度利用後のキャリア形成を円滑にするための措置の両方を盛り込む必要があります。

4. 制度の導入と利用、支給申請までのステップ

制度の規定、利用実績、期限内申請を確認

柔軟な働き方選択制度を利用した場合の支給申請までの主な流れは以下の通りです。

プランの作成

プラン作成のための面談

柔軟な働き方選択制度を就業規則等に規定 (制度利用開始日の前日までに規定が必要)

一般事業主行動計画の策定・届出(※要件として必須の場合)

制度の利用 (プランに基づき、円滑な制度利用の支援を行う)

支給申請 (利用開始から6か月間の利用実績が必要)

■ 利用実績の基準

対象労働者は、柔軟な働き方選択制度のうちの1つを、利用開始から6か月間で以下の一定の基準以上利用したことが求められます。

フレックスタイム制度/時差出勤制度/育児のためのテレワーク等/柔軟な働き方を実現するための短時間勤務制度: 所定労働日ベースで合計20日間以上の利用実績が必要。

保育サービスの手配及び費用補助: 労働者が負担した料金の5割相当額以上かつ事業主が負担した額が3万円以上、または事業主が負担した額が合計10万円以上であること。

養育両立支援休暇制度: 20時間以上の利用実績が必要。

■ 申請期間

申請期間は、6か月間の制度利用期間の翌日から2か月以内です。郵送で申請する場合は、配達記録が残る方法(簡易書留など)で送付し、申請期間内に労働局へ到達(期限内必着)が必要です。

5. もう一つの柱:子の看護等休暇の有給化支援

法律を上回る制度導入で助成(30万円)

本コースには、「柔軟な働き方選択制度」の導入支援とは別に、「子の看護等休暇制度有給化支援」のメニューがあります。
これは、子の看護等休暇を法を上回る制度として有給化した場合に助成されるもので、1事業主につき1回限り30万円が支給されます。

■ 支給要件(子の看護等休暇の有給化支援)

令和7年10月1日以降に子の看護等休暇制度を有給化し、労働協約または就業規則に規定していること。

有給化された休暇は、年次有給休暇と同等の賃金が支払われ、1年度あたり10労働日以上付与され、時間単位(中抜け可能)で取得できる制度であること。

この休暇制度の対象となる小学校第3学年修了までの子を養育している雇用保険被保険者が、支給申請日の前日に在籍していること。

この有給化の規定例には、子の負傷・疾病の世話のほか、予防接種、健康診断、感染症に伴う学級閉鎖、さらには子の入園(入学)式、卒園式への参加を目的とした利用も含まれます。

■ 申請期間

申請期間は、有給の子の看護等休暇を規定した日の翌日から起算して2か月以内です。
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【社労士事務所からのメッセージ】
両立支援等助成金(柔軟な働き方選択制度等支援コース)は、制度導入から利用実績の確認、プランの作成、就業規則への明文化に至るまで、準備すべき事項が多く、手続きが煩雑になりがちです。当事務所では、貴社の業態に合わせた柔軟な働き方制度の設計支援から、就業規則の改定、労働局への各種届出・申請サポートまで一貫して承っております。助成金を活用し、社員が働きやすい魅力的な職場環境を構築するため、ぜひ一度ご相談ください。

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