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2025.10.06
2024年4月施行済!労働条件明示ルール改正:社労士が解説する企業のチェックポイント

法改正

2024年4月施行済!労働条件明示ルール改正:社労士が解説する企業のチェックポイント

2024年(令和6年)4月1日、「労働基準法施行規則」および「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」が改正され、労働条件の明示ルールが大きく変わりました。

この改正は労働者の雇用の安定を目的としており、特に有期契約労働者に関するルールがより具体的になっています。今回の改正は、すべての事業主が労働条件通知書や就業規則を見直す必要があった重要な変更点です。皆様の会社では、対応はお済みでしょうか?

適切な対応でコンプライアンスを確保し、労使間のトラブルを未然に防ぐためにも、私たち社労士が、具体的にどのような対応が必要だったのか、主要な変更点と企業のチェックポイントを改めて解説します。

1. 【全労働者対象】「変更の範囲」の明示が義務化

すべての労働者に対して「変更の範囲」の書面明示が義務となりました

詳細

2024年4月1日以降に労働契約を締結または更新するすべての労働者(無期契約労働者、有期契約労働者を含む)を対象に、新たな明示事項が追加されました。
**「就業場所及び従事すべき業務の変更の範囲」**について、雇入れ直後の就業場所や業務の内容に加え、将来の配置転換などによって変更され得る範囲を、書面で明示することが必要です。

「変更の範囲」とは、その労働契約の期間中における就業場所や業務の変更が見込まれる範囲を指します。例えば、テレワークを想定している場合は、労働者の自宅やサテライトオフィスなども「雇入れ直後」または「変更の範囲」として明示する必要があります。

対応のポイント:

「『会社の定める場所・業務』といった抽象的な表現だけではなく、できる限り変更の範囲を明確に記載し、労使間で認識を共有することがトラブル防止につながります。

明示は書面(労働者の希望によりメール等も可)で行う必要があります。

2. 【有期契約】「更新上限」の明示が必須に

有期労働契約の締結・更新ごとに上限の有無と内容の明示が必要です

詳細

有期労働契約者に対しては、労働契約の締結時と更新のタイミングごとに、**「更新上限(有期労働契約の通算契約期間または更新回数の上限)の有無とその内容」**を書面で明示することが義務となっています。
これは、パート・アルバイトや契約社員、定年後に再雇用された有期契約労働者などが対象です。

記載例:

「契約期間は通算4年を上限とする」

「契約の更新回数は3回まで」

3. 【有期契約】更新上限の新設・短縮には「事前の理由説明」を

上限の新設・短縮時は、適用前に理由を説明する義務があります

詳細

有期契約労働者に対し、契約締結後に更新上限を新たに設けたり、短縮したりする場合には、その上限が適用される前のタイミングで、あらかじめ理由を説明することが必要になりました。

更新上限を新たに設けようとする場合

更新上限を短縮しようとする場合(例:上限を5年から3年に短縮)

この説明は、文書を交付して個々の労働者ごとに面談等で行うのが基本ですが、説明事項を記載した資料の交付や説明会の実施といった方法も可能です。トラブル防止のため、書面等で労働者と内容を確認することが推奨されます。

4. 【無期転換】「申込機会」と「転換後の労働条件」の明示義務

無期転換申込権の発生時、二つの明示が義務となりました

詳細

同一の企業との間で有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合、労働者は無期労働契約への転換を申し込む権利(無期転換申込権)を得ます。
この権利が発生する契約更新のタイミングごとに、使用者は以下の2点を書面で明示することが義務づけられました。

無期転換申込機会の明示: 無期転換を申し込むことができる旨。

無期転換後の労働条件の明示: 無期転換後の労働条件(契約期間を除く)。

無期転換後の労働条件は、無期転換前と同一の条件が原則です。職務内容などが変わらないにもかかわらず労働条件を低下させることは、無期転換を円滑に進める観点から望ましくないとされています。

5. 【無期転換】正社員との「待遇差」に関する説明(努力義務)

正社員等との均衡を図った事項の説明が求められています(努力義務)

詳細

無期転換申込権が発生する契約更新のタイミングごとに、事業主は、無期転換後の労働条件を定めるにあたり、他の通常の労働者(正社員等)との均衡を考慮した事項について、労働者に説明するよう努める必要があります(努力義務)。

均衡を考慮する事項の例:

業務の内容

責任の程度

異動の有無・範囲

その他考慮した事項

労働者の理解を促すため、個々の待遇ごとに、他の労働者との違いの有無、内容、およびその理由を説明することが、労働条件への納得感を高めることにつながります。

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