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2025.10.07
【中小企業経営者必見】万が一に備える!労災保険「特別加入制度」のすべて

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【中小企業経営者必見】万が一に備える!労災保険「特別加入制度」のすべて

経営者の皆様、日々の業務、本当にお疲れ様です。事業の発展に尽力する中で、皆様ご自身の「万が一」への備えについて、十分にお考えでしょうか。

労働者を守るための労災保険は、本来、労働者の業務または通勤による災害に対して保険給付を行う制度です。しかし、その業務の実情などから、労働者に準じて保護することが適当と認められる方々(=労働者以外の人)が、特別に任意加入できる制度があります。それが「特別加入制度」です。

この制度は、中小事業主やそのご家族、役員といった方々が、業務上のリスクに備えるための非常に重要なセーフティネットです。

本記事では、中小事業主等の特別加入制度について、加入の範囲から手続き、万が一の際の補償内容まで、プロの視点から詳しく解説します。すでに加入されている方も、これから加入を検討されている方も、ぜひご一読いただき、適切なリスク管理にご活用ください。

1. 特別加入制度とは?中小事業主等が労災保険に加入できる理由

労災保険は、原則として「労働者」を保護するための制度です。しかし、中小事業主のように、ご自身も現場で労働者と同様に業務を行う方々は、労働者と同じように業務上の危険にさらされています。

そこで、業務の実情や災害の発生状況からみて、労働者に準じて保護することがふさわしいと認められる一定の方を対象に、国が特別に任意加入を認めているのが「特別加入制度」です。本記事では、この中小事業主等の特別加入について、特に注意すべき点を解説していきます。

2. 「特別加入」の対象範囲と手続きの流れ

対象となる「中小事業主等」とは?
特別加入の対象となるのは、以下の両方に当てはまる方です。

1. 一定数以下の労働者を常時使用する事業主(法人の場合は代表者)

※労働者の数は金融業・保険業・不動産業・小売業なら50人以下、卸売業・サービス業なら100人以下など、業種ごとに定められています。

※年間100日以上労働者を使用する場合も「常時使用」とみなされます。

2. 上記1の事業主のもとで働く、労働者以外の方

(例:事業主の家族従事者、法人の代表者以外の役員など)

手続きの方法と「包括加入の原則」
特別加入には、所轄の都道府県労働局長の承認が必要です。手続きは以下の流れで進めます。

労働保険事務組合への委託
まず、事業主の方は「労働保険事務組合」に事務処理を委託します。

申請書の提出
労働保険事務組合を通じて「特別加入申請書」を所轄の労働基準監督署経由で労働局長に提出します。

承認
労働局長に承認されることで、特別加入が認められます。

【重要】包括加入の原則
加入申請は、事業主本人だけでなく、対象となる家族従事者や役員などを全員まとめて(包括して)行う必要があります。ただし、療養中の方など、実態として事業に従事していない方は対象から除くことができます。

変更届が必要となる場合
加入後、以下のような変更があった場合は、速やかに「特別加入に関する変更届」の提出が必要です。

加入者の氏名や業務内容に変更があった

新たに対象となる人が増えた(労働者を除く)

加入者が特別加入の要件に当てはまらなくなった

【ご注意ください】
災害が発生した後に変更届を提出しても、その災害に対する給付内容には反映されません。変更があった際は、速やかに手続きを行いましょう。

3. 要チェック!加入時健康診断と給付制限

加入時に健康診断が必要なケース
過去に特定の業務(例:粉じん作業、振動工具を使用する作業など)に一定期間従事した経験がある方は、加入申請時に「特別加入時健康診断申出書」を提出し、国の費用負担で健康診断を受ける必要があります(交通費は自己負担)。

健康診断の結果による加入制限
健康診断の結果によっては、特別加入が制限される場合があります。

ケース1:療養に専念すべき疾病がある場合
症状が重く、一般的に就労が困難と認められる場合は、業務内容にかかわらず加入は認められません。

ケース2:特定の業務を避けるべき疾病がある場合
その特定の業務以外の業務についてのみ、加入が認められます。

保険給付の制限に関する注意点
特別加入者への保険給付は、加入後の業務が原因で発症したことが明らかな疾病に限られます。そのため、以下の点にご注意ください。

特別加入前に発症した疾病や、その原因が加入前にあった疾病は、保険給付の対象外です。

加入時健康診断で問題なしとされても、その後の疾病の原因が主に加入前の業務にあると判断された場合は、保険給付は行われません。

4. 「給付基礎日額」の決め方と保険料の算出方法

給付基礎日額とは?
給付基礎日額とは、休業補償などの給付額や保険料を計算する基礎となる金額のことで、3,500円から25,000円までの間で、加入者が希望する額を申請し、労働局長が決定します。

この金額を低く設定すれば保険料は安くなりますが、万が一の際の給付額も少なくなります。ご自身の所得などを考慮し、適切な額を選ぶことが非常に重要です。

給付基礎日額の変更
変更したい場合は、原則として年度が変わる前の3月2日から3月31日までの間に申請します。災害発生後の申請は認められないため、見直しは計画的に行いましょう。

年間保険料の計算式
年間保険料は、以下の式で算出されます。

保険料算定基礎額(給付基礎日額 × 365日) × 各事業の保険料率 = 年間保険料

5. 災害時に受け取れる保険給付と特別支給金

特別加入者が業務または通勤により被災した場合、以下の保険給付と特別支給金が支給されます。

補償の対象となる範囲
業務災害の例

申請書に記載した労働時間内に、事業のために行為を行う場合

労働者の時間外労働や休日労働に応じて就業する場合 など

通勤災害の例

合理的な経路・方法による、自宅と職場間の往復 など

主な給付内容
ここでは、代表的な給付の種類を解説します。

【療養(補償)等給付】

どのような場合?:業務や通勤が原因のケガ・病気で治療を受けるとき。

給付の内容:労災病院や指定病院での治療費が無料になります。それ以外の病院で治療を受けた場合は、かかった費用が支給されます。

特別支給金:なし。

【休業(補償)等給付】

どのような場合?:治療のために働けず、賃金を受けられない日が4日以上続くとき。

給付の内容:休業4日目から、1日につき**給付基礎日額の60%**が支給されます。

特別支給金:給付基礎日額の**20%**が上乗せで支給されます。

【障害(補償)等給付】

どのような場合?:ケガや病気が治った後に、障害等級(第1級~14級)に該当する障害が残ったとき。

給付の内容:障害等級に応じて、年金または一時金が支給されます。(例:第1級は給付基礎日額の313日分)

特別支給金:等級に応じた一時金が支給されます。(例:第1級は342万円)

【遺族(補償)等給付】

どのような場合?:業務や通勤が原因で死亡したとき。

給付の内容:遺族の人数に応じて、年金または一時金が支給されます。(例:遺族4人以上の場合、給付基礎日額の245日分)

特別支給金:遺族の人数にかかわらず300万円(一時金)が支給されます。

【葬祭料】

どのような場合?:死亡した方の葬祭を行うとき。

給付の内容:「31万5千円+給付基礎日額の30日分」か「給付基礎日額の60日分」のいずれか高い方の額が支給されます。

特別支給金:なし。

給付額の具体例(給付基礎日額1万円の場合)
例1:20日間休業した場合

休業補償(給付基礎日額の80%相当)が17日分支給されます。

(1万円 × 60% + 1万円 × 20%) × 17日 = 13万6千円

例2:死亡し、遺族が4人いる場合(年金)

遺族(補償)等年金:1万円 × 245日 = 年間245万円

遺族特別支給金:300万円(一時金)

【支給制限について】
災害が本人の故意や重大な過失によって発生した場合や、保険料を滞納している期間中に発生した場合は、給付の全部または一部が支給されないことがあります。

ご不明点や具体的な加入手続きについては、お近くの労働保険事務組合または所轄の労働基準監督署にお問い合わせください。弊所でも、中小事業主様の適切な特別加入をサポートいたします。

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