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2025.10.28
企業の社会的信用を守る:プロが解説する就活ハラスメント対策 徹底ガイド

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企業の社会的信用を守る:プロが解説する就活ハラスメント対策 徹底ガイド

近年、「就職活動中の学生等に対するセクシュアルハラスメントやパワーハラスメント」を指す就活ハラスメントが、企業の存続にも関わる重大な問題として認識されています。 就活ハラスメントが発生した場合、企業は「ハラスメントを起こした会社」として社会的信用を失い、企業イメージが低下するだけでなく、応募学生の減少や、既存従業員のモラル・生産性への悪影響、さらには貴重な人材の流出といった深刻なリスクに直面します。 労働施策総合推進法および男女雇用機会均等法に基づく指針においても、企業には、就職活動中の学生等に対するハラスメントについて、職場と同様の方針を明確化し、相談に適切に対応することが望ましいと明記されています。 本記事では、社労士の視点から、企業がこれらのリスクを回避し、健全な採用活動を実現するために講じるべき具体的な防止対策について、先進的な取り組みを行う企業の事例を交えながら解説いたします。

1. 就活ハラスメントが企業にもたらす深刻なリスクと法的背景

就活ハラスメントとは、就職活動中やインターンシップ中の学生等に対して行われるセクシュアルハラスメントやパワーハラスメントを指し、学生等の尊厳や人格を不当に傷つける許されない行為です。
企業にとって、これは単なる個人の問題ではありません。リスクとして、以下の点が挙げられます。

• 「就活ハラスメントを起こした会社」として企業の社会的信用を失い、企業イメージが低下する。
• 就職後の職場でもハラスメントが横行していると認識され、応募が減少する可能性がある。
• 従業員の働く意欲やモラルの低下により生産性に悪影響が及び、貴重な人材の退職・流出につながる。

労働施策総合推進法および男女雇用機会均等法に基づく指針では、企業が職場におけるハラスメントの方針を明確化する際、就職活動中の学生等に対しても同様の方針を示すことが望ましいとされています。

2. 採用活動の根幹:「公正な採用選考」の徹底

ハラスメント防止の基本として、公正な採用選考の実施が重要です。公正な採用選考とは、応募者の基本的人権を尊重し、適性・能力に基づいて選考を行うという、厚生労働省が事業主に求めている基本的な考え方です。
公正な採用選考を徹底するためには、面接時に以下の事項を尋ねないことが求められます。

• 本人に責任のない事項の把握
(例): 本籍・出生地、家族に関すること(職業、収入、地位など)、住宅状況、生活環境など。 • 本来自由であるべき事項(思想・信条)
(例): 宗教、支持政党、人生観、思想、労働組合、愛読書など。
• 採用選考の方法: 身元調査や、合理的・客観的に必要性が認められない健康診断の実施。 ある企業様では面接前に「公正な採用選考」の実施を応募者に対して宣言し、人権を尊重した選考基準を明示しています。

3. リスクが高い場面に特化したリクルーターの行動規範策定

特にセクシュアルハラスメントは、若手社員がリクルーターとして関わるOB・OG訪問や面談時に起こりやすいことが指摘されています。 企業は、リクルーターや採用担当者向けに明確な行動指針やマニュアルを策定することで、リスクを低減できます。

例えば、「リクルート活動における行動規範」を制定し、以下のルールを定めている企業様の事例です。

• 面談場所の制限: 会社施設、学校施設、または喫茶店・レストラン等(ただし個室は不可)に限定する。
• 事前申請の義務化: 社員がOB・OG訪問を受ける際は、面会場所や学生の氏名などを会社に事前に届け出る。
• SNSの使用禁止: 面談時にLINE等のSNSを使用しない。 また、住友生命保険相互会社では、「リクルーターハンドブック」において、OB・OG訪問用マッチングアプリへの登録禁止や、酒席を共にする場合の留意事項を明記しています。

4. 未然防止を強化する応募者個人情報の厳格な管理

就活ハラスメントの中には、学生の個人情報が悪用されたケースも存在します。ハラスメントの芽を摘むための厳格な対策として、応募者の個人情報利用を限定することが効果的です。

例えば、面接官がシステム上で応募者のエントリーシートを閲覧する際に、住所、電話番号、Eメールアドレスなどの個人情報の一部を非表示にする対策を導入しました。これにより、採用担当者やリクルーターが個人情報を悪用し、学生に直接連絡を取るリスクをゼロにしています。
選考時の利便性は低下するものの、ハラスメントリスクを回避することを最重要視する企業姿勢の表れです。

5. 風土を醸成する継続的な啓発活動と相談体制の整備

ハラスメント防止は、個人の問題にとどまらず、全社的な職場環境と企業風土が影響します。そのため、企業は継続的な教育と、安心して相談できる体制の整備が不可欠です。

教育・研修の実施:
• 採用担当者やリクルーターだけでなく、全従業員を対象とした就活ハラスメントに関するeラーニングや研修の実施が望ましいです。

相談・通報窓口の設置:
• 就活生が利用できる人事部から独立した「ハラスメント対策室」を設置し、社外にも相談窓口を設けることで、相談者が不利益を被る心配なく利用できる仕組みを構築している事例もあります。

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これからの主な対応としては「事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発」として「面談等を行う際のルールをあらかじめ定めておくこと」等、
「相談体制の整備・周知」「発生後の迅速かつ適切な対応」として「相談対応」「被害者への謝罪」といった事前の準備と対策が不可欠です。

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